真島あみオフィシャルブログ
21世紀的魔女論

《第2話》ブブとレディ


 

 

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ブブとレディとは?

 

 

 

「あぁ、君か。レディ」

 

レディとブブが初めて喋った時から1週間が経っていた。

 

「あなたは変わらずここに立っているのね」

 

「あぁ、主人が仕事に行った時はね」

 

「いつも同じ繰り返しで飽きないの?」

 

1週間前と同じ姿勢で街を見続けるブブの姿をレディは可笑しく感じた。

 

「人から見て変わらないと思うことと、本当に変わってないかは全く別の問題だよ。変わらないように見えるものは、実は変わり続けている」

 

レディは自分でブブに話を聞いておきながら、今は右足の毛繕いに夢中だった。レディは言いたいことは何でも口にはするが、その返事を最後まで聞くかは気分次第だ。

 

「同じことをしていても、昨日と全く同じ日だったことなど一度もない」

 

そんなレディの様子を知ってか、知らずか、ブブは街を見つめながら続けた。

 

「レディ、君は毎日同じ恋人と過ごしても幸せではないのか?」

 

「幸せに決まってるじゃない。そこに愛があれば」

 

「それと同じことだ。変わらない為に変わり続ける必要もある」

 

「恋をしたことがないのに、恋を知ったように語るのね」

 

毛繕いに満足した右足を見つめながら、レディは答えた。
ブブにとって街を見守ることが大切なように、レディにとって綺麗な毛並みを確認することは大切だからだ。

 

変わらずに愛し合える関係になるためには、お互いが変わり続ける必要がある。

 

レディがたくさんの恋愛を通して学んだことだった。

 

本当に何も変わらない関係とは、ゆっくりと壊れていく関係でもある。

 

愛を深めて行くには、時間と変化が必要になる。
変化は刺激であり、刺激のない愛はつまらない。

 

刺激のない関係は、アイスコーヒーの氷が溶けていくように、時間と共にどんどん薄まっていく。

 

変わらないためには変わり続ける必要がある。

 

レディは自分が恋愛を通して学んだ人生の哲学を、自分と全く違う生き方をするヘンテコな犬の口から聞くことになると思わなかった。

 

レディは少し苛立っていた。

 

恋愛をしたことがないヘンテコな犬と自分が同じことを思っているなんて、それを受け止めるにはもっと時間が必要だった。

 

男は何でも複雑で立派そうに話をする。

そうやって大層立派なものにしなければ話してはいけないルールでもあるかのように本当にめんどくさい。

 

レディは自分の中に湧き上がった苛立ちを「男はめんどくさい」という結論を出すことでなかったことにした。

 

ただレディは声に出していないつもりだったが、最後の「めんどくさい」が自分の耳から聞こえてきて、自分が声に出して喋っていることに気が付いた。

 

でも、それを気にはしなかった。

 

ブブも「めんどくさい」と言われたことを気にしていないようだった。

 

「ただ主人の帰りを待っているだけじゃない?それがそんなに立派なことなの?」

 

「待つことは大切ではない。待っている人がいることが大切なのさ」

 

「ほら、めんどくさい」

 

レディはそう言って街の方へと歩いた。

 

しかし、しばらく歩いてブブの方を振り返った。

 

「そういえばあなたの名前はまだ聞いていなかったわ」

 

「ブブだ」

 

「ねぇ、ブブ。この街を守るってことは、私のことも守ってくれるってことかしら」

意地悪な笑みを浮かべながらレディが言った。

 

「その時が来れば、期待に応えられるかもしれないな」

 

「期待はしないけど、それは楽しみね」

 

ブブは返事はしなかった。

 

レディはブブが返事をしないことを知っていたのか、そもそも返事に興味がなかったのか、レディは街に向かって歩き出した。

🐕 🐈

 

 

 

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